久保田翠さん |
●「生きる力」「自分を表現する力」を見つめる
浜松市にある「クリエイティブサポートレッツ」の活動は、障害者福祉施設という枠を超え、私たちの社会にある既存の価値観を揺さぶる。「レッツ」が発信しているのは、「アート」を通した“人間とは何か?”“人間の幸福とは?”“人間が生きる意味は?”という私たちの存在の根本に関わる疑問だ。「レッツ」に出会った人は、この疑問を目の前に突き付けられる。それは「レッツ」を立ち上げた久保田翠さんが向き合ってきた、人生と社会に対する疑問そのものだ。
久保田さんが「レッツ」を構想するきっかけとなったのが、今から19年前、第2子である長男が生まれた時、その子に障がいがあったこと。息子を育てていく中で社会からの疎外感を感じた。そしてとにかく、自分自身と息子が幸せに生きられる“居場所”をつくろうと思って始めたのが「レッツ」。 設立当初から、人間が本来持っている“生きる力”“自分を表現する力”を見つめる場を提供、それを通して、障がいや国籍、性差、年齢などあらゆる“ちがい”を乗り越え、全ての人々が互いに理解し、分かち合い、共生することのできる社会づくり「ソーシャル・インクルージョン」を目指している。
「レッツ」の活動の主軸となるのが、「アート」だ。久保田さんにとって「アート」とは、社会の既成概念を壊すもの。障害者福祉施設の現場はすごくクリエイティブなことが生まれている場所で、創造と知の拠点だと感じている。 |