 猪野かおりさん
猪野かおりさんは、全国でも数少ない女性の林業従事者だ。早朝、朝もやに包まれる富士市南松野奥深くの山林に、チェーンソーの音が響き、一本の木がゆっくりと倒れていく。根元に立ち、チェーンソーを手に、倒れる木の様子を見つめる猪野さん。彼女はチェーンソーを構えると、倒れる方向を見定め、次の伐倒にかかる。さらに、重機に乗り込み、同僚2人と共にチームワークで木を切り倒していく。間伐と呼ばれるこの作業は、森林の一本一本の樹木が適度な間隔を保つことで、太陽光が木の根元まで十分届くようにするために行う木の間引きのことで、健全な樹木の育成を促す。健全な樹木によって構成される森林によって、降った雨が蓄えられ川に流れたり、二酸化炭素が吸収されたり、土砂災害などが起こりにくい地盤が生まれたりするのだ。
猪野さんは、農業高校を経て農林大学校で林業を学んだ。その後この道に進んだのは自然な成り行きだったといえる。自然が大好き、体を動かすことが大好きで、自然の中で木や土などに触れながら仕事ができたら…と思い描いていた。 |