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共同参画ワーキンググループ「トゥルー・カラーズ・プランニング」代表 園部真由美さん【この人に聞く!】

2015年06月02日

園部真由美さん

園部真由美さん

「あなたは何のためにスキルアップしますか?」
これまでの道のり

そもそも私の男女共同参画の知識はゼロでした。社会人になり、物事がうまくいかず世の中おかしいと思いながらも、自分の運が悪く能力が足りないからあきらめようと言い聞かせてきました。その後、カナダでのボランティア活動や、夫の赴任に伴うメキシコ生活において、日本とは全く違う社会構造の中で人々の苦悩と現実にふれた経験が、私の活動の原点にあります。
帰国後、島田市へ。小さな子ども連れで頼る親戚もなく、アパートで子育ての毎日でした。ちょうど防災を学びたいと考えていた頃、東日本大震災が発生。震災の翌日、市役所に「自分に何かできることはないか?」と電話しましたが、結局物資を送るくらいで、大災害を前に役に立たない自分に心が痛みました。それまでの人生で、住む場所や立場が変わるたびに一生懸命やってきましたが、自分を社会に活かしている充実感がない状況が長く続いていました。
その頃、地域参加のきっかけにと島田市の男女共同参画広報誌の編集員になりました。当初、男女共同参画の知識が全くなかったのですが、1年ほど経った頃、それまでぼんやりとしていた焦点がピタリとあってきました。自分の人生が、ジェンダーの視点から見えることに気づいたのです。女性であることで受け入れざるを得なかった、あきらめざるを得なかった社会に、長年生きてきたことに初めて気づいたのです。
日本は経済的に豊かで恵まれた国です。にもかかわらず、なぜ個人の能力を発揮しづらいのかと考えた時に、自分が悪い、運がない、仕方がないと思いこんでいる人が多いのではないでしょうか。しかしそうではなく、これまで「体が健康な成人男性」が主となって物事を決定してきた社会に、女性や障がい者などの社会的弱者、若者、子どもたちの声が反映されてきたのだろうか?逆にそこに自分たちの人生を合わせようと生きてきたのでは?
と気づいたのです。その時から目が覚めました。世の中のからくりが見えてくると同時に、競争社会で苦悩する多くの男性も知りました。最大のマイノリティである女性や社会的弱者の視点や能力、感性が反映されれば、より多くの人が豊かで生きやすい社会になるはずです。ジェンダーに苦しんでいるのは女性だけではありません。立場を超えた多様な視点と理解を取り入れることは最大の危機管理。より強くしなやかな社会に繋がるのです。

これからの道のり
2012年に仲間と立ち上げた、共同参画ワーキンググループ「トゥルー・カラーズ・プランニング」は、メンバー4名が仕事や子育ての傍ら、家庭科講座・防災・国際理解・婚活などの企画実施や情報発信を通し、ジェンダー平等(男女共同参画)とダイバーシティ(多様性)の視点を伝える活動をしています。名前の由来は「本来の自分らしさ」です。私たちはひとりひとりが自分らしい色(=個性や可能性)を持っています。それらを発揮しやすい社会が理想ですが、実際の活動は非常に難しいです。今の日本にはまだ、本来のジェンダー平等の本質や良さが理解されていないと感じます。
これからの男女共同参画には、長年本腰を入れなかった「より多くの人々の理解」という土壌作りが最も大切です。たくさんの種が芽を出し、育って、それぞれが鮮やかな花を咲せ、実を実らせるための豊かな土壌をいかにつくるか。その効果はすぐに見えません。時間をかけてゆっくりと育むことが必要で、非常に地道な作業となります。身近にある「男だから・女だからこうあるべき」という固定的価値観に向き合い、地道にほぐしていくことが大切です。具体的には、トップの理解と行動、組織や政策の予算・意思決定の場により多くの女性が入る、家庭や地域社会へより多くの男性が関わるなど、垣根を超えることが必要です。

「スキルアップ」とは?
スキルアップしようとは意識しておらず、知らない世界や相手をより理解したいという好奇心が私の原動力です。あえて言えば私にとってのスキルアップとは、「もっと自分を好きになるための働きかけ」です。長所も短所も含め、より自分を愛すことが、より他者を愛すことに繋がります。周囲には、真面目で能力が優れているのに自己肯定感が低い人が割と多く、背景には今の社会の「生きづらさ」を感じます。まず自分を客観的に認め、愛すことで、次に他者に目を向けることができる。社会を変えるきっかけは、そこから生まれるのではないでしょうか。
この春から、大学に通い始めました。年齢は関係なく、学びたい時、学べるときが学び時。自分自身が豊かになるために、新しい視点を得る小さなチャレンジをぜひ始めてほしいです。
理想は、誰もが自分らしさを発揮しあえるトゥルー・カラーズな社会。互いの違いや大切にしたいものを尊重し、「あなたがいてくれるからうれしい」と思いあえる社会です。少子高齢化、人口減、雇用、格差、社会保障・・・課題山積みの日本をどう進めるのか。
次のステージへ、これからは私たちひとりひとりのやる気と知恵と可能性を活かしあう時代です。