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岩口 達真さん、サイグサ ダイスケさん(特定非営利活動法人 メリメロ/沼津市)【この人に聞く!】

2017年10月20日

特集:性的マイノリティのカミングアウト・アウティング問題

特定非営利活動法人メリメロ

岩口 達真さん(右)、サイグサ ダイスケさん

「メリメロ」は2015年に発足以来、中高年の性的マイノリティをめぐる問題に取り組んでいます。性的マイノリティの人が中高年にさしかかりでてくる様々な問題を解決すべく、学びの場の提供、情報発信、交流事業を行っています。隔月で開催している“おひとりさまの料理教室”の他、来年(2019年)2月に沼津市でLGBTに関する講演会を予定しています。
★カミングアウトの難しさ
性的マイノリティのカミングアウト・アウティング問題は、ゲイ、レズビアンとトランスジェンダーでは違ってくると思います。
そもそも、ゲイやレズビアンは、性的志向のあり方のカテゴリーですが、トランスジェンダーは、身心におけるジェンダー認識に関わっています。よく混同されがちですが、性的志向とジェンダーは別ものです。
トランスジェンダーの人が自分や家族、社会と向き合うためには、カミングアウトせざるを得ません。一方、ゲイ、レズビアンの人は、カミングアウトしてもしなくても生きていくことができるので、自分の性的志向を社会に隠して生きたい場合、カミングアウトすることに消極的になり、他の性的マイノリティ当事者との繋がりを持てず孤立してしまう可能性を孕んでいます。
性的マイノリティに対する理解の壁は人によってどうしてもあり、カミングアウトしないことによって生じる不利益よりも、カミングアウトすることによって生じる不利益のほうが大きい場合もあると言えます。カミングアウトすることのメリットは、異性とのお見合いや合コンの話から解放されることや、カミングアウトした相手との信頼関係を強固にできるということなどが挙げられると思いますが、この人に話しても無理だと感じた時には、無理をしてカミングアウトする必要はないと思います。
家族へのカミングアウトも、家庭環境によってケース・バイ・ケースですし、地域によっても、横のつながりの希薄な都会ではカミングアウトしやすい一方、地縁の強い地方では口を閉じざるを得なく、カミングアウトするのが難しいと言えます。
★一般社会への理解を広げるために
一昨年前(2015年)、某大学のゲイの学生が、別の男子学生に「好きだ」と告白したところ、SNSを通じてゲイであることを暴露(アウティング)され、そのことを大学のハラスメント相談窓口に相談したところ、ジェンダークリニック(通常、性同一性障害を扱う)を紹介されるなど、不適切な学校側の対応が重なり、不幸にも自死を遂げるという出来事がありました。自死を選んだ学生の親族は、アウティングした学生と大学を相手取り裁判を起こし、現在審議中です。この出来事は、性的マイノリティをめぐる人々の無知・無理解がまだまだ根強いことを物語っています。
カミングアウト・アウティングは非常に繊細な問題です。性的マイノリティの人がカミングアウトするのは、相手を信頼しているからで、そのことを暴露するのはその人を裏切ることです。また今回、相談員の理解度の不足も明らかになりました。この事案は現在裁判中ですが、裁判の骨子に沿った指導要領みたいなものができれば、二度とこのようなことが起きることがない環境づくりのきっかけになると思います。
広く一般社会に、性的マイノリティへの理解を促すためにも、教育現場からのアプローチが必要だと感じています。臨床心理士を養成する大学などでも、LGBTに関する講座が授業の中に組み込まれてきています。関心の高さは人それぞれですが、自分とは関係のないことだからと無関心な態度を決め込むのではなく、どんな特徴を持った人も包摂できる人材が育成されれば社会は変わると思っています。